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メルエンプタハ碑文


大カルナク碑文

§574 題名
1[陛下がリビアの国で成し遂げた勝利の冒頭部]
[・・・]*1、アカワシャ人*2、トゥルシャ人*3、ルッカ人*4、シルダーヌ人*5、シェケレシュ人*6、北方人が全ての国から押し寄せた。

§575 メルエンプタハ王の武勇
2[・・・・・・・・・・・・・・・]*7彼の武勇は彼の父アモンの力の内にあり、上下エジプトの王バエンラー・メリアモン、ラーの息子メルエンプタハ・ヘテプヘルマアトは命を与えられた。見よ、この良き神は[・・・・・・・・・]君臨する。 3[・・・・・・・・・・・・]彼の[父なる]全ての神々は彼を守護する。全ての国々は彼メルエンプタハ王を見て恐れおののいた。 4[・・・・・・・・・・・・・・・]荒廃させ、荒れ地を広げ*8、彼の治世の間にエジプトの全国境への侵入者を屈服させるように命じた。 
5[・・・・・・・・・・・・・・・]彼の全ての計画における決定は必要にして不可欠なものだった。彼は彼の力への恐怖が 
6[・・・・・・]の内にある間、人々を安心させた。

§576 防衛準備
[・・・・・・・・・]アトゥムの町オンを守り、プタハ・タテネン神の砦を守り、[・・・]を悪しき[・・・] 7ペル・ベレセト*9の前のテントを[・・・]エティ運河の[・・・]*10シェケン運河まで[・・・]

§577 リビア人の侵略
8[・・・・・・・・・・・・・・・]は顧みられず、9の弧のせいで牧草地として見捨てられ、先祖の代から荒廃するがままに捨て置かれている。全ての上下エジプトの諸王は自身のピラミッドに住んでいる。 9[・・・・・・・・・・・・・・・]上下エジプトの諸王は軍勢を擁さず、敵を迎え撃つ弓兵さえ持たずに宗教的な宮殿の真っ只中に住んで*11いる。

§578 メルエンプタハの即位と対応
10それは[・・・・・・・・・・・・・・・]*12彼がホルスの玉座を[引き受け]、民の生を守ることを委ねられた(時に)起こり、彼は王として人々を守るために立ち上がった。[・・・・・・・・・]*13故に彼の内にはそれを果たすに足る力があった。 
11[・・・・・・・・・・・・・・・]メベルに彼の選り抜きの弓兵が集められ、戦車兵が全方面に繰り出され、彼の斥候は[・・・・・・・・・]彼の[・・・]内に[・・・]。 12[・・・・・・・・・・・・・・・]彼の[・・・]。彼は軍の配置についてすぐ考えた。彼の歩兵は出陣し、重装歩兵は麗々しい出で立ちで弓兵隊を連れて敵国*14へ向かった。

§579 リビア人と海の民の反エジプト同盟
[・・・・・・] 13[・・・・・・・・・・・・・・・]第3季に、(伝令が来て)言うには、惨めな堕落したリビア人の酋長デッドの息子メレウィ*15が弓兵を率いてテヘヌーの国から攻め上ってきている。 14[・・・・・・・・・・・・・・・]シルダーヌ人、シェケレシュ人、アカワシャ人、ルッカ人、トゥルシャ人も最良の戦士全員と持てる兵力全てを率いて(これに)加わった。彼等は妻子*16まで連れてきている。 15[・・・・・・・・・・・・・・・]野営の指揮官達と彼はペリレの野の西境に到着した」

§580 メルエンプタハの演説
見よ、陛下は彼等に関する報告を聞いて、獅子のように激怒し、御前会議を招集して彼等に言った。「汝等の主の命を聞け。予は[・・・]を捜し出すことに専念する。 17子を守る父として[・・・]、汝等が鳥のごとく恐れている一方で、彼のなした善行を知らない。この中に答えられる者はいないのか? 18[・・・・・・・・・・・・・・・]9の弧が国境を侵す間、全ての国々の侵攻によってこの[国が荒廃]して見捨てられ、叛逆者共*17が毎日国境を越えることを許して良いというのか? 全ての[・・・]取り、 19[・・・・・・・・・・・・・・・]これらの砦を奪う。彼等は繰り返しエジプトの野に入り、大いなる川まで来ている。彼等は留まり、ずっとそこで暮らしている。 20[・・・・・・・・・・・・・・・]彼等はオアシスの丘*18に達し、トイェー地区*19を切り取っている。[そして]このことは上下エジプトの他の時代の諸王の記録*20にも見えることだ。(それなのに、)そのことは知られていなかった。 21[・・・・・・・・・・・・・・・]蛆虫のように、奴らは自分の身の安全を考えることなく、死を愛し、生を嫌っている。奴らは(エジプトの)民に対して心を高揚させ、 22[・・・・・・・・・・・・・・・]彼の酋長[・・・]。 彼等は土地を流離い、戦うことに時を費やし、体を満たす。彼等は飢えを逃れるために*21エジプトの国に来ており、彼等の望みは 
23[・・・・・・・・・・・・・・・]予は奴等の飢えを利用して、奴等を網にかかった魚のような有様に陥れる。奴等の酋長は犬のようで、勇気もないのに(何かと)鼻に掛け、彼は[・・・]耐えられない。  24[・・・・・・・・・・・・・・・]ヒッタイトの国を存続させるために船に乗せて穀物*22を送らせたペディティシュー*23に破滅をもたらす。 25[・・・・・・・・・・・・・・・]我が許にある、命を与えられしメルエンプタハである。我がカァと[・・・]によって予が2国の王として栄えるのと同じくらいエジプトも 
26[・・・・・・・・・・・・・・・]だろう。人がテーベで話す時、アモンは賛成の意を示して頷く。彼等が[・・・]である時、彼はメシュウェシュ人に背を向け、テメフー人の国に目をやろうとはしない。27[・・・]」

§581 軍事行動の開始
[・・・・・・・・・・・・]*24弓兵隊長はリビアの国を攻撃するためにその前に(陣取った)。彼等が前進する時、神の手が彼等と共にあり、アモン(さえも)が彼等の楯として彼等と共にあった。エジプトの国を率いて曰く、 28「[・・・・・・・・・・・・・・・]14日間の行進*25の準備をせよ」

§582 メルエンプタハの夢
そして陛下は、ファラオ(万歳!)の前でプタハの神像が立っているのを夢*26で見た。彼は 29[・・・・・・・・・・・・・・・]の背丈を(持っているかのようであった)。彼は剣*27を差し出しながら「(これを取れ、そして汝の内から臆病な心を追い払え)」と言った。ファラオ陛下は「見よ、 30[・・・・・・・・・・・・]」と彼に答えた。

§583 2軍団の接近
[・・・]無数の歩兵部隊と戦車部隊は彼等の前のペリレ前方の岸辺に野営した。見よ、惨めな[リビアの]酋長は 
31[・・・・・・・・・・・・・・・]第3季の3月の2日夜、前進するのに(十分に)明るくなった時[・・・]惨めな堕落したリビアの酋長は第3季の3月の3日にやって来て、[・・・]もたらし、 32[・・・・・・・・・・・・・・・]彼等が到着するまで[・・・]、陛下の歩兵部隊は戦車部隊と共に出陣し、アモン・ラーが彼等と共にあり、オムビート*28が彼等に手をさしのべた。

§584 合戦
[全ての]人は 33[・・・・・・・・・・・・・・・]彼等の血[・・・]、彼等の内で逃れ得た者はいなかった。見よ、陛下の弓兵は6時間かけて彼等を殲滅し、剣などを得、 34[・・・・・・・・・・・・・・・]その国の[・・・]。見よ、彼等が[・・・・・・]奮戦したために、惨めなリビア人の酋長は進軍を止め、彼の心は恐れ戦き、(再び)撤退し、止まり、跪き、 35[・・・・・・・・・・・・]槍も弓も矢筒も[放り出して][彼の]前からあわてて退却し、何もかもが彼と共にあった*29。[・・・・・・]彼の四肢を[・・・]、大いなる恐怖が彼の兵士達を追った。 36見よ、彼等は[・・・・・・・・・]殺し、彼等の所有物、すなわち彼の[装備]、銀、金、青銅の器、彼の妻の家具*30、彼の玉座、弓矢、細工品といった 36彼が祖国から持ってきた物に加え、牛、山羊、ロバといった家畜[や全ての物が]捕虜と共に王宮に[持って行かれた]。見よ、惨めなリビアの酋長は 38他の全ての民や指揮官が[・・・・・・]剣で傷ついている一方、彼[独り]全速力で逃げた*31。見よ、陛下の馬に乗った将軍達は彼等の後ろに迫り、[・・・・・・] 39敵に矢を射かけて殺し[・・・・・・]。

§585 追憶
[誰も]このようなことを下エジプトの諸王の年代記*32で見たことがない。見よ、このエジプトの地は[彼]等の力の内にあり、上エジプトの諸王の時代には脆弱であったため、 40彼等の手をはねつけられず、[・・・・・・・・・・・・]これらの[・・・]最愛の息子への愛故にエジプトをその主のために守って寺院を救い、 41[良き]神の卓越した力を明らかにするために[・・・・・・・・・・・・]

§586 リビアの酋長の遁走
西の砦*33の指揮官は御前会議(万歳!)に以下のような報告書を送った。「堕落したリビア人の酋長メレウィは(ここまで)来た(が)臆病さの故に、夜の好意の許体一つで私の手許から安全に逃れた。 42[・・・・・・・・・・・・・・・]欲し、彼は陥れられ、全ての神々はエジプトに味方した*34。彼が自慢したことは無に帰し、彼の言っていた全てのことは彼(自身)に返ってきた。 43彼が死んだのか、[はたまた生きているのか]は分からない[・・・・・・・・・]、汝は彼の名声について[・・・]されずとも良い。もし彼が生きていたとしても、彼は(再び軍を)指揮することはない。と言うのも、彼は落ちぶれ、*35彼の歩兵団そのものが彼の敵になっているのだから。我らを率いた汝は 44[・・・・・・・・・・・・]テメフー[とリビアの]国で殺させた。我らは兄弟の内のもう一方*36、すなわち相手と相見えた時に奮戦した方を彼の国に入れ、全ての酋長は愛想を尽かせた。 45[・・・・・・]」

§587 凱旋
[そして]弓兵隊や歩兵部隊、戦車部隊の長官が[帰還し]、派遣された全ての部隊が、新兵、重装歩兵の区別を問わず、  46[戦利品を携え・・・・・・]前にいるロバたちを[追い立て、]リビア人の無割礼の男根やリビア人に味方した者全ての手、及びに彼等の所有物を草の上の魚のように積み上げて帰ってきた。 47[・・・・・・・・・・・・]祖国の敵[・・・]。見よ、全ての国は天国のような暮らしを享受し、町や州は起こった奇跡を歓迎した。 48[・・・・・・・・・]ナイルの[・・・]バルコニー*37の下に積み上げられた貢物を見ると、陛下はいつもご自分の勝利を思い起こす。

§588 捕虜と死者の一覧
リビアの国と彼に味方した国々から連れてこられた捕虜の一覧、並びに財産 49[・・・・・・・・・・・・・・・]。ペリレから更に奥の町々にいたるまでテヘヌーの国を破壊し尽くしたメルエンプタハ・ヘテプヘルマアトはチャトゥー*38の間で[・・・]「メルエンプタハ・ヘテプヘルマアトの[・・・]」より始まる。 50リビアの酋長の息子達の無割礼の男根が6人分、リビアの酋長殺された息子達や兄弟達の[無割礼の]男根 51[・・・・・・]得られた。[・・・・・・・・・]リビア人は殺戮され、彼等の無割礼の男根6359人分*39が得られた。総酋長の息子達は全部で 52[・・・・・・]。[・・・・・・、シャル]ダナ人、シェケレシュ人、海の国から来た*40アカワシャ人等については、シェケレシュ人からは男根222人分*41が得られ、確認したところ切り取られた手は250人分*42に上った。トゥルシャ人からは男根742人分が得られ、確認したところ切り取られた手は790人分*42に上った。シルダーヌ人[・・・・・・]、確認したところ[・・・・・・]包皮を持たないアカワシャ人*43は殺戮され、彼等は包皮を持たない(ので)、代わりに[・・・・・・]手が持ってこられた。[・・・・・・]山積みになった彼等の無割礼の男根の内、王の御前*44に持ってこられた男根の数は6111個に上り、無割礼の男根の数を確認したところ 56[・・・・・・][・・・・・・]彼等の手2370人分が得られた。シェケレシュ人とトゥルシャ人はリビア人と共に敵としてやって来て、 57[・・・・・・][・・・・・・]ケヘク人*45とリビア人の捕虜218人が得られた。生きたまま、堕落したリビア人の酋長とともに連れられてきた女は12人に上る。 58(結局)全部で[・・・・・・・・・・・・・・・]9376人*46の敵が殺された。

§589 戦利品の一覧
戦の時に彼等が使っていた武器が戦利品として持ってこられた。メシュウェシュ人の銅剣9111振り、 59[・・・・・・・・・・・・]*47120214個、堕落したリビア人の酋長やその子供を乗せていた馬12番い*48が得られた。 60所有物[・・・・・・・・・・・・・・・]メシュウェシュ人[・・・・・・]。ファラオ(万歳!)の軍勢は堕落したリビア人と戦い、様々な家畜を1308頭*49得た。その内山羊は 61[・・・]頭である。[・・・・・・]様々な[・・・]が64[個得られた]。銀の杯が[・・・]得られ、タプル杯、レデット杯、剣、甲冑、短剣、そして様々な器が3174個得られた。それらは[・・・]取り出され、 62[・・・・・・・・・・・・]炎が彼等の野営と革のテントを嘗め尽くした。

§590 王宮への凱旋
主なる王(万歳!)は 63[宮廷が]王(万歳!)を歓呼する中、王宮の大広間に、自らのなしたことに満足しながら現れた。[陛下の]家来は有頂天になり、天国にも上る想いで、一行の両側を固める側近達*50は[・・・・・・]。

§591 メルエンプタハの演説
64[陛下は仰った。]「[・・・・・・・・・]ラーが予のカァのためにしてくださった善行故に、予は今こうして神としてこれらの言葉を述べ、我が名の下に布告する。 65[・・・・・・・・・]臣民として[・・・]町の中で団結すべきである。動揺にクシュも征服されて年貢に耐えている。予は[・・・]で、我が手の内に、彼に(それを)見させ[・・・] 66[・・・・・・・・・・・・・・・]彼の酋長は毎年税を納め、[・・・]にあって、彼等は完敗した。生きる者は寺院を満足させるべきである。 67[・・・・・・・・・・・・]彼等の堕落した酋長は我が前から逃れ、予は[・・・]投入し、彼を殺した。彼は焼き尽くされ、野生の鳥のように*51罠にかけられた。予はその国に[・・・]与え、 68全ての神々のために[・・・]。彼等はエジプトの主の[唯一の]口より生じた。罪人は打ち捨てられ[・・・] 69[・・・・・・・・・・・・・・・]ラーの力は多彩で、9の弧に抗し、ステカーはホルスに勝利と力を授け、真実の内に喜び、王メルエンプタハは[・・・]を打ち倒す。予は 70力強く、彼は奪われない。リビア人はエジプトに対して悪事を企てた。見よ! 彼等の守護者は打ち捨てられた! 予は彼等を殺し、彼等は[・・・・・・] 71[・・・・・・・・・・・・・・・]予はエジプトを川と共に流れさせ*52、予が彼等を愛するように民は予を愛し、予は町々に祝福を与える。天地は予の許に楽しみ、  72[・・・・・・・・・・・・・・・]彼等は見つけた。予の治世に予が彼等のためになしたこと故に若者達の口は予を讃える。[・・・]の間中[・・・]真実である。2国を取った*53メルエンプタハ王陛下という素晴らしい主を[・・・]崇拝する」

§592 宮廷の応答
彼等は答えて言った。「エジプトに何と素晴らしいことが起きたのだろう! [・・・・・・] 74[・・・・・・・・・・・・・・・]リビア人は嘆願者のように捕虜として連れてこられた。汝は全ての道にまるでイナゴ*54を扱う時のように、彼等の[屍]をばらまき、 
75[・・・・・・・・・・・・]貧しい者達の口に食料を与えた。彼等は常に幸福の内にあり、そこには[・・・]ない。 76[・・・]」

※注釈
*1敵の名称。語尾の音はiで終わっている。
*2ヒエログリフでは "-w"  ヒッタイトの「アヒワヤ人」、ホメロスの「アカイア人」と関連するのか。
*3ヒエログリフでは "tw-rw-š" ギリシア語でエトルリア・ペラスゴイ両族を指す「テュルセノイ人」と一致。
*4ヒエログリフでは "rw-kw" ヒッタイトの「ルッカ(Lukka)」と一致し、リュキア人のことを言う。
*5ヒエログリフでは "š-r-d-n" 古代サルデニア島の住民のことか。
   アマルナ文書77では、"ši-er-da-nu"と表記されている。
*6ヒエログリフでは "š-k-rw-š" 古代シチリア島の住民か。
*7この後、少なくとも62行目まで、各行の頭の5語がレンガ工事のせいで失われている。
*8カエサルの『ガリア戦記』(4:3)に見える
   「一般に自分の領地の周辺を出来るだけ広く空き地にしておくのが名誉ある事だと考える』」
  という考えはエジプトにも見られるのだろうか。
*9デルタ東端に位置するbelbêsとは無関係で、デルタ西部に位置する。
*10エティ運河はナイル・オン(へリオポリス)間を結ぶ運河で、シェケン運河は不詳。
   一部で言うように欠文に「北方の」と補うのは間違い。
*11或いは「休んでいる」
*12Burschの言うように、ここにはメルエンプタハ即位に関する言及があったものと思われる。
*13Burschの補足は信用しがたい。
*14無論リビア。
*15ヒエログリフでは "m-w-r-y-y"
*16ここの文から、リビア人や海の民の目的が侵略よりもむしろ移住であったことがうかがえる。
*17もちろん彼等は始めからエジプトに臣従してなどいない。ファラオの中華思想の現れと言えよう。
*18通常の名称はこれとは異なり、エジプト人は「北方オアシス」、ギリシア人は「小オアシス」と呼んでいた。
   正確にはファイユームの南西、北緯28°、ナイル渓谷から100マイル未満の所にある。
*19このオアシスは今日「ファラフラー」と呼ばれ、北方オアシスの75km南西にある。
   従ってリビア人はナトロン湖の南まで進出していたことになる。
*20事態がかなり以前から進行していたことへの示唆であろうか。
*21移住の原因が明示されている。トゥルシア人も彼等と共に動いている辺りからすると、
   リュディア地方におけるマネスの子アテュスの御世の大飢饉、
   シュッピルリウマUの御世のヒッタイト帝国の食糧危機、モーセの奇跡などが無関係とは思えなくもなる。
*22ヒッタイトから食料援助要請があったことは、ヒッタイトの飢饉から見て疑いようもない。
   実際ウガリト王にも穀物輸送命令が出されている。
*23ヒエログリフでは "pd'ty-šw" 。 アジア人のこと。
*24欠文中に王の演説が終わり、歩兵の行進が始まったのは明らかである。
*25ペリレに到着するまでの日数であろう。
*26ヘロドトス2:141にも類似の話が伝えられている。
*27カイロ石柱§594とアトリビス碑文§613に見える剣であろう。
*28原語 "ombite" 。セトのこと。
*29要するに大混乱が起きたことを示しているのであろうか?
*30または「飾り」
*31イスラエル碑§610.L6にも同じ事が描かれている。
*32要するに前代未聞と言うことであろう。
*33ラメセスVの大ハリス・パピルス§340.51b3にも同じ砦についての言及がある。
*34または「全ての神々はエジプトのために彼を倒した。」
*35Bruschのテクストはここで終わっている。
*36原文の意味が不明瞭のため、訳は不明確。
*37ファラオが民衆の前に現れる時に使うバルコニー。
   大ハリス・パピルス(infra4.§408)やアマルナ王朝期の幾つかの墓碑にも類似の文脈で現れる。
*38原語 čâteau ・・・ 地名
   ペリレとアトリビス碑文§600.L9に見える「大地の角」の間のどこかであろう。
*39アトリビス碑文では6200以上となっている。
*40この挿入句はアカワシャ人にのみ用いられている。
*41Müllerは212としているが、他の4テクスト全てが222になっているため誤り。
*42それぞれの人間から手が1本ずつ切られてきたとするなら、どうして確認時に数が増えているのだろうか。
*43詳細は不明。
*44王の御前に持ってこられたのは全部ではないため、6359ではなく6111という数になる。
*45原語 "kehek" 
*46恐らくリビア人と海の民の戦死者の総計。
*47恐らくリビア人が使っていた小型の武器。
*48レリーフにも同数の馬が描かれている。
*49DümichenとMarietteは1307としている。
*50または兵士か。
*51ラメセスVもメディネト・ハブ碑文§41で同様の表現をしている。
*52意味不明。自由にさせたという意味か。
*53或いは「保持した」か。
*54イナゴのように敵の屍が無数という意味か。

※出典:J.H.Breasted "Ancient Records of Egypt" 3:574〜592


カイロ石柱

§594 上側:メルエンプタハが神々から剣を授けられている場面
「我はこの剣を、汝が撃退したリビア人の酋長を斬り倒さんがために与える」

§595 下側:今は垂直の線に囲まれた下記の部分しか読めない。
1治世第5年の第3季の2月(第10の月)、ある者が陛下に奏上して曰く、「下劣なリビア人の酋長共は[・・・]*1と共に侵入し、その軍勢は男女から構成されております。シェケレシュ人 2[・・・]」

※注釈
*1欠落箇所は国名、ないしは民族名。

※出典:J.H.Breasted "Ancient Records of Egypt" 3:593〜595


アトリビス碑文

§598 序文 メルエンプタハの武勇
治世第5年の第3季の3月(第11の月)の3日、メルエンプタハ王陛下の許[・・・] テメフーの国に対する彼の名声を獲得し[・・・] 4彼等はメ[シュウェシュ]の国での勝利の数々を話題に上らせ[・・・] 6[・・・]リビアをその恐るべき力の下に従えた者[・・・][・・・] 7彼等の野営を赤い国*1の荒れ地に戻し、[・・・]奪い、 8彼等の野原から生えてきた全ての草を[・・・]、いかなる牧場も発達せず、[・・・]生きるため[・・・] 9[・・・] 10かの民は連合してエジプトに侵入してきて以来、ラー御自身によって呪われている。 11彼等はメルエンプタハ・ヘテプヘルマアトの手に剣を引き渡させられ[・・・] 12[・・・]リビアの諸部族はネズミのように防壁で四散し[・・・] 13彼等が[逃げ]場を見つけるのに手間取っている内に〔メルエンプタハ王は〕鷹のように襲いかかり、 14セクメト女神のように[・・・]。彼の矢は敵の四肢をはずすことがなく、彼等の内で生き残った全ての者は[生きたまま捕虜として連れて行かれた]。 15彼等は草の上で[野]獣のように暮らしている[・・・] 16[・・・]

§600 死者、捕虜、戦利品の一覧の序文
5[・・・]メシュウェシュ〔の国〕は勇敢な戦士、9の弧を突く力強い雄牛の手で永遠に無人となった。 6[・・・]プタハの力強き剣、(万歳!)*2がリビアの降伏者の内から連れてきた捕虜の[一覧]。 7[・・・]西の海辺に住む者の内、神々の王アモン・ラー、オン、ホルアクティ、プタハの南壁の主にして2国の命たるアトゥム、そしてステカー*3が 8メルエンプタハ王に与えた者達並びにチャトゥー*4で殺された者達の[・・・]。 9メルエンプタハ・ヘテプヘルマアトは[・・・]ペリレ*5の地と「大地の角」という山に住むチェヘヌ族*6を[・・・]。

§601 死者、捕虜、戦利品の一覧の詳細
その内訳を以下に記す。 
10降伏した惨めなリビア人の酋長の子供の無割礼の男根が6人分得られ、降伏した惨めなリビア人の酋長の子供や兄弟の内[・・・]人*7が[・・・]として連れてこられた。 11リビア人は[・・・]殺戮され、6200人分以上の男根が、 12その[・・・]家族の男根が[・・・]人分得られ、 13[・・・]200人[・・・] 14降伏したリビア人の酋長と共に、海の国から来たアカワシャ人の手が2201人分以上、シェケレシュ人は200人、トゥルシャ人は722人以上の戦死者が確認され、 15[・・・]リビア[・・・]と殺されたシルダーヌ人は[・・・]人、 16[・・・]は32人、惨めなリビア人の酋長の女は12人連れてこられ、 17降伏したリビア人は全部で9300人を上回った。 18[・・・]*8は5224個以上、[・・・]弓は[・・・]2000張り以上回収され、 19[・・・]黄金[・・・]。

※注釈
*1恐らく砂漠のこと。
   cf. プルタルコス『エジプト神イシスとオシリスについて』364A〜C、並びに柳沼注66:11
*2原語 L.P.H. ・・・ だいたいの所は、王、ないしは王室を指す尊称として使われているようである。
              ここでは便宜上屋形偵亮教授に従って(万歳!)と訳しておく。
              cf. 『運命を定められていた王子』
*3原語 sutex ・・・ セトの別称
*4原語 čâteau ・・・ 地名 大カルナク碑文参照。
*5原語 Perire ・・・ 地名 大カルナク碑文参照。デルタ西端にあった町と考えられる。
*6リビアの一部族
*7もちろん、人数。
*8恐らく武器に関する何か

※出典:J.H.Breasted "Ancient Records of Egypt" 3:598〜601


イスラエル碑

§607 日付と序文
 1ホルスの君の治世第5年、第3季の第3月3日目、真実の内にあって喜ぶ力強い雄牛、ラーの息子なる上下エジプトの王バエンラー・メリアモン、メルエンプタハ・ヘテプヘルマアトは(ホルスの)力を讃え、ホルスの勝利の剣を賛美し、9の弧を討ち従える力強い雄牛の武名は(全世界に)永遠に轟き渡った。

§608 大いなる救済
 2彼の勝利が全ての国に喧伝され、あらゆる国がそれを知り、彼の勝利の栄光が明らかにならんことを! 力の主なる雄牛メルエンプタハ王は敵対者を殺し、攻撃の際に平原*1で大いなる武勇を示した。 3エジプト上空から嵐を吹き払う太陽神*2はエジプトに日輪の光明を見せてくださり、人々の首から銅の山*3を取り払い、息を詰まらせていた人に命の息吹を与えた。彼は敵対者の前でメンフィスの心を満たし、タテネン*4の心を喜ばせた。彼は閂のかかった城壁都市の門を開放し、 4寺院に糧をお与えに(さえ)なった。百千万の(民の)心を安んじることの出来る唯一の御方は彼の鼻孔に息を吹き込んだ。彼の治世に*5彼はテメフー族の国に攻め入り、メシュウェシュ人*6の心中に永遠の恐怖を染みこませた。彼はエジプトの地に足を踏み入れた*7リビア人を追い払い、彼等の心にエジプトへの畏怖の念を植え付けた。

§609 リビア人の大敗
彼等の前衛部隊は逃げ去り*8、踏みとどまらずに逃げ続けた。敵の弓兵は弓を投げ捨て、歩兵の心は長い行進に倦み疲れ、 6水を入れた革袋を腰からはずして投げ捨てた。[食料を入れた袋も]破れて転がっている。

§610 リビアの酋長の没落
哀れな王、負けたリビアの敵王は頭に羽根飾りを付けるのさえ忘れ、供1人つれず、[裸足のまま]夜闇に紛れてただ1人逃げ出した。 7彼の女達は彼の許から奪われ、兵糧は掠奪され、王の革袋には水一滴なく、生命を保つ術さえない。彼を殺そうと彼の兄弟達の目は*9妖しく光り、彼の将軍達は同士討ちを始めた。天幕は焼かれて灰になり、彼の手許には兵に食べさせる(一食分の)食料しか残らなかった。 8彼が(失意の内に)祖国に逃げ戻ったとき、彼の国に残った者達は彼を受け入れることをいやがった。[面目を失って]彼は悪しき運命に屈し、(彼の)羽根飾り*10は奪い取られた。彼の町に住む全ての人は、彼を非難して、「彼は神々の力に掌握され、メンフィスの諸侯と 9エジプトの王はメレウィ*11の名を呪い、メンフィスの宿願*12は子孫代々永遠に引き継がれていく。バエンラー・メリアモンは彼の子供達の追撃にあたり、メルエンプタハ・ヘテプヘルマアトは彼の運命に満足する*13だろう」と言う。

§611 リビアにおけるメルエンプタハの名声
 10彼の勝利はリビアでは[諺に]さえなり、若者達は「このようなことはラー神の時代が始まって以来類を見ないことである」と口から口へ伝えている。あらゆる古老達は「ああ悲しいかな、リビアよ!*14」と子供達へ語り伝える。奴らは1日中足を引きずって歩き、たっぷり彷徨って死ぬだろう。 111年中テヘヌーの地は焼かれる。セト神は彼の酋長を見捨て、彼の[命令]*15により、リビアの村々は荒廃し、通商も途絶える。隠れる者は賢明だ。洞窟の中は安全である。敵はやがて交戦するであろう(全能のエジプト王の許)まで行くのにどれほどの距離*16を歩かねばならぬのかを知っていたのだろうか? 彼の言葉を受け入れた者*17は救いようもなく愚かだ。エジプト国境に押し寄せようとする彼は明日(待ち受ける運命)を知らない。

§612 エジプトの神聖なる守り
(エジプトについて占星術師や風読み達は)*18「神世からこの国はラーの一人娘であり、 13彼の息子はシューの玉座に坐す。エジプトに侵攻しようとして成功する者は一人として成功しない。全ての神々が*19彼女を手込めにしようとする者の後を追い、彼女の敵の背後を捉えるからである。[・・・]*20」と言う。 14エジプトに対する大いなる驚嘆の念が生まれた。その力*21は侵入者を生きたまま捕えている。ラーの存在により、神聖なる王は全ての敵の上に勝ち誇る。メンフィスの主が打ち倒した極悪人メレウィは 15オン*22で裁かれ、9柱神は彼にその罪故に有罪の判決を下した。

§613 メルエンプタハの神聖なる任命
万物の主は「メンフィスのための闘士であり、オンの擁護者、閉ざされた町の閂を開放した我が息子、心正しく寛容なバーエンラー・メリアモンに我が剣を与えよ。 16彼にあらゆる地方の封鎖された町を開放させ、寺院に捧げものをさせ、神前に香を焚かせ、貴族の財産を[回復]させ、貧民達を[再び]町に[入らせ]よう*23」と言う。

§614 オンのメルエンプタハ賛美
彼等オンの支配者達は彼等の息子メルエンプタハを見つめて、 17「彼にラーのごとき治世*24を与え、全ての国々から圧迫されている者の擁護者にしよう。エジプトはずっと[彼の相続分]とされてきたのだ。彼の力こそはその民である。 18見よ、この英雄*25の治世に暮らす者には、直ちに生命の息吹が吹き込まれるであろう[・・・]」と言った。

§615 神々がメルエンプタハにメレウィを引き渡す
19哀れな敗残のリビアの酋長は、ラーの息子として彼の玉座で輝くメルエンプタハ王めがけて「王者の壁」に攻め寄せた。プタハはかの敗残のリビア人の(酋長)について 20「彼の罪状は全て集められ、彼の脳裏に焼き付けられている。彼をメルエンプタハの手に引き渡し、鰐のように飲み込んだものを吐きださせよう。見よ、スイフト鳥*26がスイフト鳥を捕らえるように、彼の力をよく知られているのに、王は彼を罠に掛けるだろう。アモンが彼を両の腕で捕らえ、 21エルメントの地*で彼のカァをメルエンプタハに引き渡すからである」と言った。

§616 エジプトの歓喜
エジプトには大いなる喜びが訪れ、トメリ*27中の町へ歓喜がやってきた。人々はメルエンプタハがテヘヌーの地で成し遂げた勝利について語った、 22「勝利に満ちた王は何と立派なことか! 神々の内で彼はどれほど賞賛されていることか! 支配者の主は何と幸運なのだろう! 腰を下ろして楽しく話そう。もはや人々が恐れる者*28はいないのだ(から)、遠くまで歩こう。 23今や砦には人気がなく、井戸も(再び)開かれた。使者たちは*29見張りが目を覚ますまで銃眼付きの城壁の日陰に沿って歩いている。 24兵士達*30は眠っていて、国境の斥候は野原で好きなところをぶらついている。野原で放牧されている家畜は牧者なしでも(思いのままに)川の浅瀬を渡る。もう、夜に*31「止まれ! 外国語を話す者が実に何人も来ている」と声を張り上げる者もいない。 25人々は歌いながら行き来し、悲しむ人の嘆きの声も聞こえない。町には再び人が住み着き、麦を蒔いた者は確実にそれを食べることができる。ラー御自身*32が再びエジプトに帰ってきた。 26彼はエジプトを守るために生まれた。彼の名はメルエンプタハである」

§617 結びの詩
敗れた諸王達は「汝に平安あれ」*33と挨拶する。9の弧の内にあって、誰一人頭を上げる者はいない。テヘヌーの国は荒廃し、ヒッタイトの国は平和に立ち戻り、カナン*34は掠奪されて、あらゆる災いが訪れ、 27アスケロンは占領された。ゲゼルの地は掠奪され、エノアム*35は始めから存在していなかったようになり、イスラエルは荒廃し、子孫を残さない。コール*36はエジプトにとって後家となった。 28全ての国は統合され、平和に立ち戻った。不穏な者が残っていたとしても、ラー神その人のような命を与えられた*37メルエンプタハによって鎮圧される。

 

※注釈
*1または「戦場」。 Perireのこと
*2太陽神シュー
*3「重荷」「軛」のエジプト風の例え。
*4原初の水・ヌンより生まれた最初の大地、「原初の丘」の神格化。天地創造の時代に生まれた原初の神々の一人
*5エジプト外交省訳 ・・・ 「テヘヌー族の国は足腰立たぬほどに撃ち破られ、」
*6大カルナク碑文、アトリビス碑文参照
*7エジプト外交省訳 ・・・ 「侵略した」
*8エジプト外交省訳 ・・・ 「彼等の前進は食い止められ、彼等の足は踏みとどまることを知らずに逃走に転じた」
*9ファンデンベルクは「彼を殺そうと」と補っている。
*10名誉の象徴
*11ヒエログリフでは "m-w-r-y-y" ファンデンベルクは「ムロアジュ」という名を想定している。
*12エジプト外交省訳 ・・・ 「敵意」
*13要するにメレウィの子孫が没落するという意味
*14エジプト外交省訳 ・・・ 「リビア人に災いあれ」
*15エジプト外交省訳 ・・・ 「言葉」
*16§609 に関連
*17エジプト外交省訳 ・・・ 「彼を雇った者」
*18エジプト外交省訳による補足
*19エジプト外交省訳 ・・・ 「神々の目はエジプトを掠奪した者を追っていて、」
*20以下13行目の終わりまで破損
*21エジプト外交省訳 ・・・ 「この国を攻撃した者はPreの敵を討つ篤信の王の目的のために捕らわれている」
*22ギリシア名「へリオポリス」
*23この近辺文意不明
*24エジプト外交省訳 ・・・ 「命」
*25エジプト外交省訳 ・・・ 「見よ、人が強力な者の統治下で暮らすとき、その人生は非常に快い。
                   勇者は正義の許富を使い、詐欺師は泥棒を続けることが出来ない。
                   [人が不正に入手した富は決して(自分の)子の手には渡らず、他人の手に落ちる。]」
*26エジプトにいる鳥の名前
*27エジプトの別名
*28リビア人の侵略者
*29緊急性がないということ。
*30ファンデンベルクによるとヌビア系メジャイ族の警備傭兵
*31エジプト外交省訳 ・・・ 「もう、夜に外国語で「止まれ」と怒鳴ったりする者はいない」
*32メルエンプタハはラーの生まれ変わりであると言うこと。
*33原語 šâlâm ・・・ セム語系の挨拶。リビア人が従順になったという現れ。
*34原語 Pacanaan
*35ヒエログリフでは "y-nw-⊂⊃-mw" 
*36ヒエログリフでは "Ḫ-rw"
*37ファラオに対するエジプトの常套的な修辞

※出典:J.H.Breasted "Ancient Records of Egypt" 3:598〜601

※出典:The Victory (Israeli) Stele of Merneptah
※翻訳:私訳

※出典:「ラムセス二世 佑学社 1978年」頁
※翻訳:フィリップ・ファンデンベルク著 坂本明美+田島亘裕訳


 

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