×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

アガデの呪い


T.古バビロニア版

1.アッカド王国の興隆
1エンリル*1の怒りが 2キシュの町を(天の?)牛さながらに殺し、 3ウルクの家を強い牛のように砂塵の中に打ち倒した後、 4(エンリルは)サルゴン*2をアガデの王とし、 5上から下までの 6そこから高地の民に及ぶまでの主権と王権を与え〔・・・〕。 7その時聖なるイナンナはアガデに神殿を、 8聖なる女部屋*3を作り、 9ウルマシュ*4に玉座を据えた。 

2.イナンナの尽力
10ちょうど若い男が家を改築するように、 11女部屋を作る若い娘のように、 12(イナンナは)倉庫を造って食糧で満たし、 13町に住む所を作り、 14住民が素晴らしい食べ物を食べることが出来るように、 15素晴らしい飲み物を飲めるように、 16祭日を神殿の中庭で楽しめるように、 17祝祭の場に人々が集まるように、 18友人達が共に食事できるように、 19異邦人が空(行く)鳥のように歩き回るように、 20マラシ*5でさえもまた貢物を治めるように、 23純血の犬、{ライオン/山のアイベックス牛/馬}、長い毛のアルム羊*6のみならず、 21犬や猛き象、水牛や異国の獣が 22公共広場で互いに戦うように、 24聖なるイナンナは眠ることなく尽くした。 

3.かつての庶民の繁栄
25それから彼女はアガデの店をエンマ小麦と金で満たし、 26店で銀と小麦を取り引きさせ、 27銅や錫、輝かしいラピズ・ラズリの岩塊をその穀倉地帯にもたらし、 28サイロを屋根で覆わせ、外の風雨から隔てた。 29(彼女は)老女に助言を授け、 30老人に力強い言葉を授けた。 31彼女は若い男に喜びを与え、 32戦士に武器を与え、 33少年に楽しみを与えた。 34{将軍の子供の乳母は} 35アルガースルの楽器を奏でた。 36町の中ではティギ太鼓*7の音が響き、外ではザムザム楽器*8が(奏でられているのが)聞こえる。 37船の停泊する港は喜びに満ちている。 38全ての国は安んじて憩い、 39その民は幸せを味わう。 

4.ナラム・シンの威勢
40牧者たるナラム・シン王*9は 41日の出さながらにアガデの玉座に登玉した。 42市壁は{大いなる}山さながらに天まで届いていた。 43ティグリス川が海まで{流れていくように}、 44聖なるイナンナはその市門を開き、 45シュメールにその領土を船で上流にもたらさせた。 46高地のマルトゥ*10の民は農業*11を知らず、 47それに適した畜牛と親木を彼女に捧げた。 48黒きメルッハ*12国の民は 49{異国の}陶器を彼女に捧げた。 50エラム*13やスビル*14(の民)は好ましい物共をまるで自分たちが荷物運びのロバであるかのように、(背に乗せて)運んできた。 51全ての知事、{寺院運営者} 52そしてグ・エディナ*15の主計官達は 53毎月、更に新年祭の時も常に捧げ物をしていた。  54アガデの城門で起こる全てのことは何と倦怠感に満ちていることか。 55聖なるイナンナはこれら全ての捧げ物を受け取ろうとはしない。 57まるで彼女が市民の一人で、神殿{の敷地}を広げようという思いを抑えきれないかのように。 

5.神々に見捨てられしアガデ
57(しかし)エクール神殿*16からの言葉は(民を?)動揺させた。 58というのもアガデは(エンリル?のため)余す所なく動揺し、 59ウルマシュ(のイナンナ)に恐怖が降りかかったからである。 60彼女は町を去り、家に帰った。 61若い女を女部屋に見捨てる者のように、 62聖なるイナンナはアガデの神殿を見捨てた。 63武器を(捜して)急ぐ戦士のように 64彼女は町から戦いの恩寵*17を持ち去り、 56彼等を敵の手に委ねた。 

6.凋落
665日も10日も経たない内に 67(アガデに授けられた)支配権の宝玉と王冠を、 68標章と玉座を 69ニヌルタは彼のエ・シュメシャ*18に取り戻した。 70ウトゥ*19は町からその力強い言葉を奪い去った。 71エンキ*20はその知恵を奪い去った。 72天まで及んでいたその威厳を 73アン*21は天に持ち去った。 74堅固な錨(絆)を 75エンキはアブズー*22から奪い去った。 76イナンナはその武具を奪い去った。 

7.アガデの聖域の終焉
77アガデの聖域の生命は深淵に住む小さな鯉さながらに終焉を迎え、 78全市が共にそれを目にした。 79大いなる象のようにそれは首を地面に横たえているのに、 80他の者は力強い牛のように両の角を振り上げている。 81死に瀕した龍のように土に頭を横たえ、 82共に戦いの内にあっても光り輝くこともない。 

8.エンリルの怒りの予兆
83(エンリルは)アガデ王国が(これ以上)安らかに住み行き、住居が(増え)続けるのを許そうとせず、 84(その)将来を全く以て好ましくない物に定め、 85敵が来て神殿を掠奪して財宝を{撒き散らす}という 86夢を夜、ナラム・シンは見た。 87彼はそれが何を示すか悟ったが、口外せず、誰とも論じ合うことがなかった。 {87A〔・・・〕神殿は揺さぶられ〔・・・〕 87B〔・・・〕彼の神殿を占う〔・・・〕。} 88エクール神殿のために彼は喪服を着、 89戦車を葦の布で覆い{楔を取り外した}。 90彼の御座船の{天蓋/舳先/船室}を毀し、 91王権の象徴をただでばらまいた。 92ナラム・シンは(それから)7年間もの間王位に固執したのだ! 93誰が7年間もの間、顔を手に埋めた王を見たことがあろうか? {93A彼はそれが何を示すか悟ったが、口外せず、誰とも論じ〔合う〕ことがなかった。}  

9.エンリルの裁き
94そして彼は行って神殿について山羊で占った*23が 95神殿の建物については何の予兆も現れなかった。 96再度彼は行って神殿について山羊で占ったが 97神殿の建物については何の予兆も現れなかった。 98彼を悩ませるものを取り替えようと 99彼はエンリルの心を改めさせようとした。 100彼の所有物が撒き散らされたので 101彼は今や軍を動員し始めていた。 102まさに神殿の中庭に入ろうとする力士のように 103彼は手をエクール神殿に〔・・・〕。 104競走を始めようと跪く走者のように 105彼はギグナをまるで30シェケルしかしないかのように扱った。 106町を掠奪する泥棒のように 107彼は高い梯子を神殿に立てかけた。 108エクール神殿をまるで大きな船のように破壊し、 109貴金属が採掘されている山の土のように切り開き、 110ラピズ・ラズリの山のように裂き、 111それは天候神の洪水に襲われた町のように屈服した。  112神殿はレバノン杉を伐る山でもないのに 113彼は広刃の斧を用意し、 114彼はこれに対して使うために研いだ諸刃のアガシリグ斧を手にしていた。 115彼はその基礎に鶴嘴を当て、 116それは国の基底部まで崩れ落ち、 117彼はその頂に斧を置き、 118神殿は死んだ戦士のように首を地に着け、 119全ての諸外国も首を地に横たえる。 

10.アッカド人の悪行
120彼は配水管を剥がし去り、 121全ての雨は天に帰した。 122彼は楣を引き裂き、国は飾りを奪われた。*24 123「穀物の消えぬ門」から彼は穀物を奪い、 124国では穀物が欠乏した。 125幸福の門は鶴嘴で撃たれ、 126幸福は全ての外国に破壊された。 127まるで彼等は広大な土地が鯉の住む水に覆われたかのように、 128大きな{鋤/斧}をエクール神殿に対して使うべく用意した。 129人々はこれまで日光にさらされたこと(さえ)なかった寝屋を目の当たりにし、 130アカッド人は(神の)櫃の中の聖なる財宝に見とれていた。 131神殿の基礎を付柱から見守るラハマ*25は 132今まで何の冒涜も受けたことがなかったのに 133ナラム・シンの手で火に投ぜられた。 134レバノン杉、糸杉、レダマの木、ツゲの木、 135ギグナの木*26は彼によって〔・・・〕。 136彼は入れ物に金を入れ、 137革袋に銀を入れた。  138彼はまるでたくさんの穀物を運ぶかのように港(の船)を銅で満たした。 139銀細工師は銀を打ち直し*27、 140宝石屋は宝石を作り替え、 141鍛冶屋は銅を打っている。 142神殿は打ち壊されて町から姿を消し、 143大きな船が神殿の傍らに錨を降ろし、 144大きな船がエンリルの神殿の傍らに錨を降ろした。 145掠奪して売るためのものでないにもかかわらず(このようなことをしたせいで)、 146町から(神)域が消えた後、 147アガデは良識を失った。 148船が港を離れると共にアガデの叡智は消え去っていった。 

11.グティウム人の侵攻
149全地を征服する轟き渡る嵐、 150何者も立ち向かい得ない洪水(のごとき) 151エンリルは気に入っていたエクール神殿が破壊されたことの報復に何を破壊すべきか考えていた。 152彼はグビナ山*28に目を向け、 153広大な山脈の全住民に山を下らせた。 154他の(いかなる)民にも似ず、 154無数の国土の人の家を征服してきた 156人の知能は具えるものの犬の{心/本能}と猿の顔を持つ 155自制心なきグティウムの民を 157エンリルは天まで届く山々の国から(遣わし)、 158(彼等は)地面めがけて大挙して急降下する小鳥のように(襲いかかった?) 159エンリルの故に彼等はその手を平原を横切って、動物を捕らえる網のように延ばした。 160何人もその手から逃れることは出来ず、 161その統制をかわすことは出来ない。 162もはや使者が街道を旅することはなく、 163急使の船が川を渡ることもない。 164(グティウム人は)当てになる(?)エンリルの山羊を彼等の丘陵地帯から追い払い、その牛飼いを付いてこさせ、  165彼等は雌牛を家畜小屋から追い立て、牛飼達を付いてこさせた。 166囚人達は見張りをするようになり、 167山賊達は街道を占拠している。 168この国の城門は撤去され、泥濘の中に横たわっている。 169全ての異民族は彼等の町の城壁で激しく泣き叫んだ。 170彼等は、いつものように(町の)外の平原でなく、市内に庭を造った。*29 171まるで町々が建てられる前の頃のように、 172広い{平野と}耕地は穀物を稔らせず、 173水のある{土地や}場所には魚がおらず、 174灌漑されて出来た果樹園では蜂蜜も葡萄酒も出来ず、 175厚い雲は雨を降らせず、マシュグルム*30は育たなかった。 

12.町の混乱
176その頃油は1シェケルで(たった)半シラ*31、 177穀物は1シェケルで(たった)半シラ、 178羊毛は1シェケルで(たった)半ミナ*32、 179魚は1シェケルで(たった)1バンしか買えなかった。 180これらの物は当時市場でこのような値で取り引きされていたのだ! 181屋根の上で横たわったものは屋根の上で死に、 182家の中で横たわった者は(地に)葬られた。 183人々は飢えのため四肢を激しく震わせた。 184エンリルの大いなる地キ・ウル*33の近くで、 185犬共が人気のない街路に押し込まれていた(ので)、 186もし2人の人がそこを歩こうものなら彼等はそこで犬に貪り食われ、 1873人の人がそこを歩こうとも、彼等はそこで犬に貪り食われた。 188鼻は折られ(?)、頭は打ち砕かれ(?)、 189折れた鼻が積み上げられ、頭は種のように蒔かれた。 190正直者達は偽証者と間違われ、 191英雄達は折り重なって斃れており、 192偽証者の血は正直者に注がれた。  

13.アガデへの哀歌
193その時エンリルは(彼の)大いなる神殿を 194とても小さな葦の小屋に再建し、 195東から西まで宝物庫を小さくしていった。 196当時(エンリルに?)仕えていた老婆や 197当時仕えていた老爺、 198そして当時仕えていた哀歌奏者の長は 1997個の太鼓を置き、 200まるで地平線に立っているかのように、 201ウブ、メゼ、{{青銅の}シェム、}リリス*34を7日7晩イシュクル*35のように(エンリルに)奏でた。 202老婆は「ああ悲しや、我が町よ!」と嘆くのを止めず、 203老爺は「ああ悲しや、市民達よ!」と嘆くのを止めず、 204哀歌奏者は「ああ悲しや、エクール神殿よ!」と嘆くのを止めない。 205若い娘は彼女の髪に涙を流すのを止めず、 206若い男は刀を研ぐのを止めない。 207彼等の哀歌はまるでエンリルの祖先が 208エンリルの膝の傍の聖なる塚で奏でる哀歌であるかのようであった。 209それ故エンリルは聖なる閨に入り、断食して横たわった。  

14.神々の呪詛(1)
210その時、シン*36、エンキ、イナンナ、ニヌルタ*37、イシュクル、ウトゥ、ヌスカ*38、そしてニサバ*39といった偉大な神々が{全て}、 211エンリルの心を冷水で冷やして祈った。 212「エンリルよ、汝の町を破壊した町が、汝の町を扱ったのと同様に扱われんことを! 213汝のギグナを冒涜したものがニップルのように扱われんことを! 214その町では首がその井戸を埋めんことを! 215何人もそこでは友を見いださず、 216兄弟を兄弟と認めぬように! 217そこの若い娘が主が女部屋で惨殺され、 218老爺はその妻が殺されたことを嘆かんことを! 219鳩は窓敷居で嘆き、 220小鳥は人目に付かぬ所で殺され、 221そは常に臆病な鳩のごとく不安の内に生きんことを!」。 

15.神々の呪詛(2)
222再び、シン、エンキ、イナンナ、ニヌルタ、イシュクル、ウトゥ、ヌスカ、そしてニサバといった全ての神々が 223この町に思いを巡らせ、 224アガデを激しく呪った。 225「町よ、汝はエクール神殿とエンリルを襲った! 226アガデよ、汝はエクール神殿とエンリルを襲った! 227(故に)汝の聖なる城壁が最も高い所まで悲嘆の声に満ちんことを! 228汝のギグナが塵に返らんことを! 229汝の付柱にいるラハマが 230葡萄酒を飲んだ若い男のように地に堕ちんことを! 231汝の泥はアブズーに返り*40、 232その泥はエンキに呪われんことを! 233汝の穀物は耕地に返り、 234その穀物はエジヌ*41に呪われんことを! 235汝の木材は森に返り、 236その木材はニニルドゥマ*42に呪われんことを! 237{汝の}牛の屠殺者が彼の妻を屠り、 238{汝の}羊の屠殺者が汝の子を屠らんことを! 239水が汝の乞食を、彼が〔・・・〕求めている時に洗い流さんことを!  240汝の娼婦がその売春宿で首を吊らんことを! 241汝の内に住む、身籠もった神殿娼婦や神に選ばれし女がその子を流産せんことを! 242汝の金が銀の値で購われ、 243汝の銀が黄鉄鉱(?)の値で購われ、 244汝の銅が鉛の値で購われんことを!」 

16.神々の呪詛(3)
245「アガデよ、汝の強者達が力を奪われ、 246そのため食糧袋や〔・・・〕を持ち上げられなくなり、 247汝の優れた驢馬に乗る喜びも味わえなくなり、1日中無為に過ごさんことを! 248このため町が飢えで死なんことを! 249かつて立派な食べ物を口にしていた市民が 250草原で飢えて倒れ、 251汝の〔・・・〕者がその屋根の覆いを食べ、 252彼の父の家の正門の鞣し革、 253(他ならぬ)その鞣し革を噛まんことを! 254不運が、喜びの内に建てられた宮殿*43に住み憑かんことを! 255砂漠の悪魔が静かな所で絶え間なく唸らんことを!」 

17.神々の呪詛(4)
256「浄化儀式のために建てられた(?) 257汝の肥育場を、度々塚を荒らす狐が尾で掠めんことを! 258汝の国の家の入り口に 259不幸の鳥ウクク*44が巣を営まんことを! 260汝の町はティギ太鼓のために眠ることが出来ず、 261喜びの内に憩うことが出来ず、 263静かな所で砂漠を彷徨う者のように 262小屋を埋めるナンナ*45の牛が大声で吠えんことを! 264運河の土手の曳船路の草が長く伸び、 265悲しみの草が汝の馬車道を覆わんことを! 266運河の沈殿で造られた曳船路で、 267更に〔・・・〕野生の牡山羊(?)や山に住む用心深い蛇が何人も通さぬように。 268立派な牧草の育つ汝の平原では今や悲しみの草が育つ(ように)! 269アガデよ、汝のために新鮮な水を流していた川に塩水*46が流れんことを! 270もしも誰かが『この町に住もう』と決めても、その者はこの町に住むことに喜びを見いださぬように! 271もしも誰かが『この町で休もう』と決めても、その者はここで憩うことが出来ぬように!」  

18.アガデの破滅
272そしてウトゥ(の日?)の前の、まさしくその日、全てはまさにそうなった。 273運河の土手の曳船道では草が長く伸び、 274馬車道では悲しみの草が伸びた。 275更に運河の沈殿で造られた曳船道では〔・・・〕、 276野生の牡山羊と山に住む用心深い蛇は、何人も(そこを)通さなかった。 277立派な草が育っていた草原では今や悲しみの草が育っている。 278アガデの川には今や塩水が流れた。 279誰かが「この町に住もう」と決めても、彼はこの町に住むことに楽しみを見いだすことは出来なかった。 280誰かが「アガデで憩おう」と決めても、彼はアガデ滞在を楽しむことは出来なかった。 

19.終章
281イナンナはアガデの破滅を嘉納し給う。 


U.ニップル出土版

断章A (OB版71〜75行)
 〈数行欠落〉
1(アガデの町から)〔エンキ〕はその〔叡智〕を奪い去った。 2天まで届いていたその〔威厳〕を 3アンは〔天に〕持ち去った。 4堅固な〔絆を〕 5〔エンキは〕アブズー〔から奪い去った〕。
 〈以下数行欠落〉

断章B (OB版84〜86行)
1将来(アガデに)全く持って好ましくない(運命が訪れ)、 2敵が神殿を掠奪して財宝を撒き散らすという 3夢を夜、ナラム・シンは見た。
 〈以下数行欠落〉

断章C (OB版〜行)
1まるで〔彼に害を与え続けていた者を〕完全に取り替えたよう。 
2彼の所有物は撒き散らされ、 3そのため彼は軍を動員し始めた。 4まさに寺院の中庭に入ろうとする力士のように、 5彼は彼の手をエクール神殿に〔・・・〕。 6競争を始めようと跪く走者のように、 7彼はギグナをまるで30シェケルしかしないかのように扱った。 8町を掠奪する泥棒のように、 9彼は高い梯子を〔神殿に〕立てかけた。 10神殿はレバノン杉の山という訳でもないのに、 11彼はこれに対して使うために用意した斧を手にしている。 11A{彼はこれに対して使うために研いだ諸刃の〔アガシリグ〕斧を持った。} 12まるで彼らは広大な土地が鯉の住む水に覆われたかのように、 13大きい鋤を{エクール神殿に対して使うため}用意した。 14彼はその基礎に斧を当てた。

断章D (OB版124〜126行)
1そして〔国では穀物が〕欠乏した。 2幸福の〔門〕は鶴嘴で撃たれ、 3幸福は全ての蛮夷に破壊された。
 〈以下数行欠落〉

断章E
 4行の断片が残されているものの、欠損が激しく翻訳は困難である。ためにここでは割愛する。

断章F (OB版188〜195行)
1鼻は折られ、頭は{打ち砕かれ}、 2折られた鼻は積み上げられ、首は種〔のように蒔かれた〕。 4英雄達の〔屍は〕天まで〔・・・〕 4裏切〔者〕の血は正直〔者〕の上に〔注がれる〕。 5エンリルは(彼の)〔大いなる〕神殿を 6とても小さい葦の小屋に再〔建し〕、 7上から下まで〔・・・〕。 


注釈


*1:シュメールの至高神。嵐の神としての側面も持つ。シュメール語では“en-lil2”。
*2:アッカド人の王で初めてメソポタミアを統一した。在位期間は前2340年〜前2284年。原文表記は“šar-ru-gen6”。
*3:原文表記は“ama5”。英訳では“woman's domain”となっていたため、便宜上こう訳した。
*4:地名。原文表記は“ul-maški”。アッカド領内にあった町と思われる。
*5:地名。原文表記は“mar-ha-šiki”。恐らくメソポタミアの外。
*6:原文表記は“a-lum”。
*7:原文表記は“tigi”。
*8:原文表記は“za-am-za-am”。
*9:サルゴンの孫。メソポタミアで初めて自らを「神」と称した。在位期間は前2254〜前2218。原文表記は“dna-ra-am-dsuen”。グティウムの侵攻が起こったのはこの王より3代後のことである。
*10:当時メソポタミア周辺で遊牧生活を営んでいたセム系アモリ人。原文表記は“mar-tu”。
*11:原文では「大麦」。大麦は穀物の総称とされたようである。
*12:インダス文明との関連が指摘され、サンスクリット語の“mleccha”に比定される。原文表記は“me-luh-haki ”。
*13:ザグロス山脈南麓、スーサ周辺の民族。原文表記は“elamki”。
*14:恐らくはメソポタミア上流部の民族。アッシリアの古称でもある。原文表記は“su-bir4ki”。
*15:原文表記は“gu2-edin-na”。
*16:天地を繋ぐ繋留綱の役割を果たしたとされる神殿。原文表記は“e2-kur”で、「山の家」が原義。
*17:イナンナには戦女神としての側面もある。
*18:原文表記は“e2-šu-me-ša4”。
*19:太陽神。原文表記は“dutu”。
*20:深淵に住む水神で、知恵の神でもある。「エア」ともいう。原文表記は“den-ki”。
*21:天空神で名目上は最高神。「アヌ」ともいう。原文表記は“an”。
*22:エンキの住処の「深淵」の神格化。『エヌマ・エリシュ』では神々の祖先として描かれる。原文表記は“abzu”。
*23:恐らく腸卜占い。
*24:異本「国の飾りは消え失せた」
*25:ラフムの配偶神。『エヌマ・エリシュ』ではティアマトとアブズーの間の子。原文表記は“la-ha-ma”。
*26:原文表記は“gi-gun4-na”。
*27:以下の文は神殿から掠奪した物を加工している様子を示す。
*28:ザグロス山脈の山。
*29:異本「庭を広げた」
*30:植物の一種。原文表記は“ĝišmaš-gurum ”。
*31:1シラ = 約850ml
*32:1ミナ = 約500g
*33:原文表記は“ki-ur3”。
*34:原文表記はそれぞれ“ub3”、“me-ze2”、“šem3”、“li-li-is3”。いずれも太鼓の一種。
*35:天候神アダドの別名。原文表記は“diškur”。
*36:月の神。原文表記は“dsuen”。
*37:エンリルの息子。戦神、農耕神、鍛冶神の要素を持つ。原文表記は“dnin-urta”。
*38:シンの息子。エンリルの伝令神。原文表記は“dnuska”。
*39:農耕・書記術の女神。原文表記は“dnisaba”。
*40:同様の表現は『アンズー神話』にも見える。
*41:神名。原文表記は“dezina2”。
*42:神名。原文表記は“dnin-ildum2-ma”。
*43:異本「喜びに満ちた宮殿」
*44:原文表記は“u3-ku-ku”。
*45:愛の女神。アヌの娘。原文表記は“dnanna”。
*46:塩害を暗示しているものか。


参考文献

底本

1The ETCSL projectThe cursing of Agade: composite text原典の翻字
2The ETCSL projectThe cursing of Agade: translation英訳

 

シュメール関係

1飯島紀世界最古の文字 シュメール語入門泰流社1995
2飯島紀日本語-セム語族比較辞典国際語学社2003
3池上正太オリエントの神々新紀元社2006
4Patrick C. RyanSUMERIAN GLOSSARY

 

このページの内容を学術目的で使われて何かあなたに不利益が生じても、
私は一切責任を負いませんのでご了承下さい。